乗鞍ヒルクライム

スタッフSです。先日乗鞍ヒルクライムに参加してきました。その際の事をエッセイにしました。お時間があるときにでも読んで頂ければ幸いです。

フロント

乗鞍ヒルクライム

 

9月6日(土)、7日(日)休みをもらい、長野県の乗鞍高原(長野県松本市安曇)で開催された「全日本マウンテンサイクルIn 乗鞍」(以下、乗鞍ヒルクライムと略す)に参加してきた。乗鞍ヒルクライムは、今年29回目の開催で、参加人数も約4500人と、日本を代表するヒルクライム・レースの1つだ。それゆえ参加希望者も多く、大会への参加登録は遡ること半年前に行われ、抽選を経て参加することができる。お客様からレース参加への話を受けていたこともあり、度胸試しのつもりで応募してみた所、運良く参加できることになった。とはいえ、初めてレースに参加するわけで、どのような練習をしたらいいのかなど考えているうちに当日を迎えてしまった。きちんと準備をしておくべきであったと反省しているというのは言うまでもない。

 

registration

 

乗鞍高原までは、八王子からは車で約4時間。中央道から松本を経由して、乗鞍高原を目指した。参加受付がレース前日におこなわれるため、大会本部のある乗鞍高原観光センター駐車場に向かった。大会会場には、自転車メーカーや、パーツ・アクセサリーを扱う店、食べ物屋がテントを広げ、参加者の物欲を刺激していた。レースを明日に控えた会場には、ちょっとしたお祭りムードが漂っていた。

 

TREK

ちなみにTREKのブースもあり、今年発表されEmonda SLRが展示されていた

 

その日の行事は終わったので、翌日のレースに備えて近くに位置する民宿に向かった。一緒に行った6人での相部屋で、ふとんを川の字にして寝るのは、中学の修学旅行以来であった。その晩に枕投げなどはもちろんなかった。それどころか翌朝4時半に起床する予定であったので、夜8時には就寝するという何とも規則正しい生活というか、静かな夜であった。

 

乗鞍ヒルクライムのコースは、乗鞍高原観光センター前を出発し、長野県と岐阜県の県境にある鶴ヶ池駐車場をゴールとする距離20.5km(標高差1260m)を走るコースだ。途中、7.0km地点と15.0km地点にチェックポイントがあり、給水ポイントとしてアクエリアスや水が貰える。

 

レース当日は、朝から小雨が降るあいにくの天気。4時半なので外はまだ暗く、宿の屋根にあたる雨の音が、実際の雨の降り方よりも強く部屋に響いていた。眠い目をこすりながら朝食をとり、テレビで天気予報を確認するも雨のちくもりの予報。気分もなかなか乗らないどころか、このまま大会が中止になるのではないかという空気も漂っていた。そうこうしつつも集合時間が迫っていたので準備を急いだ。

 

Road

 

宿からスタート地点までは、ややきつい登りが続いていた。雨の雫が木々の葉をつたってヘルメットに落ちてくる中、薄い霧に覆われた道には、集合場所に向かう参加者たちの吐く息の音が静かにこだましていた。スタート地点では、すでに多くの参加者がゴール地点で受け取る荷物を預け終わっていた。降りしきりる雨の中、参加者らは身を寄せ合いながら、いくつか用意されたテントの下などで、スタートの時刻を待ちわびていた。ほどなくして、大会実行委員会から、ゴール地点の天候不良により、ゴールが予定より1km手前に変更され、距離が19.1km (標高差1,180m)になるとの放送が入った。参加者からは、ため息とともに、これからの天候を心配する声が聞こえてきた。スタート時刻は、カテゴリー別(主に年齢別)に決められ、私の参加する「男子Cグループ」は最後から2番目の8時半頃のスタートであった。

 

今大会が初めてのヒルクライムレースであり、もちろん乗鞍ヒルクライムも初めてであった。普段走り慣れているコースなら、割りかしここまでの登ればゴールまで後少しだとか、余力の調整が出来るのだが、初めてのコースとなるとそうはいかない。事前にYou Tubeで過去のレース動画を見たが、坂の傾斜などは実感できるわけでもなく、果たして完走すらできるのか、スタートするまでは変な緊張感が続いた。

 

ヒルクライム

 

スタート。最初の10kmは、NHKの自転車番組『チャリダー!』で特集していたヒルクライムの走りを思い出しながら、身体の力を抜き、フォームを崩さずに、呼吸を整えながら、一定のリズムで上ることが出来た。しかし10kmを超えた頃から、太ももにだんだんと痛みが出始め、さらにお尻とハムストリングに痛みが出始めた。これは危ないと思いつつも、ごまかしごまかしながらペダリングするも、限界が見えてきた。そんなとき、すでにゴールして下り始めていたお客様たちとすれ違い、その都度、激励を頂き、それを聞く度に、再び足に力が入り、ペダルをまわせるようになった。下りで一緒になった参加者らも、危険な箇所に配置された大会関係者(皆さん曰く、若いきれいな女性が多かった)の黄色い声援に、幾度となく励まされたという。よくスポーツ選手がサポーターの応援に励まされたというコメントを聞くが、このことを言うのだと実感した。どうしてもくじけそうなときに、一言「がんばれ、あともう少し!」と声をかけられると、もう少し頑張ろうと思えるのだから、不思議なものである。

 

ヒルクライムなので、もちろん登り中心であまり景色などを見る余裕などはないのだが、気分を変えようと景色を見ようにも、あたりは濃い霧におおわれ、何も見えない。山肌に突如として現れる滝や、ときどきする硫黄の匂いぐらいしか気を紛らわせるものはなかった。ひたすらインナー・ロー(一番軽いギアの組み合わせ。リアのギアが28Tであったことに後悔した)でペダルをまわしながら進むと、ある瞬間から目の景色が一変した。第2チェックポイントを通過してから少したったときのことだ。

 

Mountain

 

ひときわ青い空と、白く雪が残る雪渓、そして鮮やかなグリーンの山肌を縫うように、いろいろのカラーのユニフォームを着た参加者がゴールに向かっていく姿がそこにはあった。実は登っている最中に、山頂の天候が回復し、山頂付近のみが晴れ渡っていたのだ。この景色をみるために、険しく曲がりくねった山道をのぼってきたのだといっても過言ではないほどの景色が、眼前に広がっていた。ゴール地点が見えたとは言っても、今の体力であそこまで持つのか一瞬不安がよぎったが、ここまできたら何が何でも登らないとだめだろうと、ひたすらペダルを回した。

 

そしてゴール。ようやく着いたと、ほっとした。取りあえずは完走したので、よしとしようと自己満足に浸った。ゴール地点には、遥か前にゴールしていたお客様(B様)が待っていてくれて、私のゴールシーンを写真におさめてくれていた。なんとも嬉しい瞬間であった。

 

Goal

 

ゴールするとまず預けたバッグを受け取り、補給食をとりながら、しばらく目の前に広がる絶景に見とれていた。そんなに長くはいられないため、下りに備えてジャケットとフルフィンガーのグローブ、シューズカバーをはき、お客様と合流した。

 

ヒルクライムでは、下りに事故が相次ぐことから先導車を先頭に、集団でゆっくりと下っていくことになっている。斜度があるので、減速しながらの下りは、ほぼブレーキをかけたままになるので、注意が必要だ。前年に大会に出られたお客様から、「下りは本当に気をつけないといけないよ」と、下る際の準備やポイントについて事前にアドバイスいただいていたので、安全に下山でき、とてもよかった。下る頃には、霧も散り始め、周りの景色が見えるようになると、よくこの山道をのぼってきたなと、下っている間中、何回もそう思った。もしスタートから霧がなく、この景色を見ていたら、完走できていたかわからない。それだけ初心者の私にとっては、険しいヒルクライムであったということだろう。霧のお陰で、むしろレースに集中でき、目の前の道を淡々と進むことができたのかもしれない。下るにつれて、体感温度もあがってきて、青々とした木洩れ陽の射す緑の道を下る気分は、充実感と爽快感で一杯であった。

 

今回ヒルクライムのメッカのようなレースに何も知らずに参加してみて、わかったことがある。それぞれのレースにそれぞれの特色がある一方、それぞれの参加者にもそれぞれの目的がある。自己タイムを更新する、優勝を目指す、あるいは私のように完走を目指すなど。そのいずれの目的においても、レースにでることによって、いつものライドとは違った何かを得られるということは間違いないだろう。そこには、日常生活ではなかなかない緊張感があって、互いに一つのゴールを目指して集い、いつも以上にちょっと力を出せて、結果、少し成長できる、ほんの少し何かが変わっていく瞬間がある。私の場合、参加することに意味があるぐらいの軽い気持ちで挑んだものの、練習不足がたたり、酷く苦しい思いをした。しかしゴール間際に目の前に広がった絶景を見て、何かご褒美をもらったような気がした。おそらく車で同じ道を登ってきたなら、そのような気持ちにはならなかっただろう。それは、同時に純粋に自転車にのっていて楽しいと思った瞬間でもあった。

 

とここまで書いてみて、一体この人物はどんだけの人物なんだと、つっこみ所が満載な内容になっていることだろう。私を知っている方ならなおさらだ。ただ今回このようにレースを振り返ってみると、これを読んでいただいているお客様にも、サイクリングの一つの楽しみ方としてレースに一度参加されてみることをおススメしたい。どんなレースでも構わないので、取りあえず完走できそうなレースを選んで参加してみてはいかがだろうか。そうすると、私が感じたように、何か違うものが見えてくるはずだ、きっと。

 

Ride Bikes, Live Better!

(バイクに乗って、よりよく生きよう!)

jaJapanese
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